私が想定するかぎり、がんの手術に関連する確認(質問)では合計二十八項目。
以下、がん手術の流れに沿う形で全二十八項目を紹介しておく。
主治医孚術執刀医)との面談時には、これをヒントにして確認(質問)項目のメモを作り、役立ててほしい。
○手術前の確認(質問)①五項目-手術前の検査日程と入院日の決定
・手術前に必要な検査の種類?
・それぞれの検査の予約日は?
・患者家族に対する手術説明はいつになるか?
・入院予定日は?
・入院期間の大体の目安は?
○手術前の確認(質問)②十六項目-がん手術の説明
・手術前の検査の結果はどうだったか?
・手術前に予想されるがんの進行度は?(再確認)
・最終的に決定された手術名は?(再確認)
・その手術はどのような方法で行われるか?
・手術の成功率は?(再確認)
・手術の予定時間は?
・手術に伴うリスクは?
・手術後に起こりうる合併症は?
・大体の目安として、回復の経過は?
・手術後、がんの補助療法は必要か?
・がんの補助療法が必要な場合、どのような日程か?
・手術に伴う後遺症はあるか?(その後遺症は改善されるか?)
・ふつうの食事はいつから摂れるか?
・手術後のリハビリ開始の予定は?
・手術後、いつごろ退院できるか?
・手術後の暮らし方はどう変化するか?(社会復帰できる一応の目安)
○手術終了後の確認(質問)七項目-手術結果の説明
・手術の結果はどうだったか?
・がんは全部取りきれたか?
・がんの広がり具合、転移の有無などは手術前の予想どおりか?
・手術前の説明どおりの術後経過と考えてよいか?
・もし手術前の予想と違ったとすれば、何か、どのくらい違ったか?
・手術後の見通しは手術前と何か違うことはあるか?
・病理検査の結果はいつ出るか?
一回のがん手術でも、このように二十八もの確認項目があって、一つひとつについて患
者家族側は積極的に訊ねるべきである。
メスを入れるのは患者の体であり、がん治療のためとはいえ、その後遺症に耐えるのも患者本人である。
また、今かかっている病院や医師を信頼して治療を受けるためにも、患者家族が内心で抱く疑問や不安はできるだけなくしたほうがよいと思う。
ほかにも、手術当日には麻酔担当医による麻酔の説明があるので、そこでは次のような
質問が必要だろう。
○手術前の確認(質問)五項目-麻酔の説明
・手術開始時刻は?
・手術室の入室時刻は?
・手術室に入る前の麻酔処置は?
・手術中の全身麻酔の時間は?
・全身麻酔から覚醒するのはいつか?
自分の病気を正しく理解しよう
厚生労働省の人口統計をみると、わが国では、二十一世紀の幕開けとともに「がん死三
十万人時代」が到来した。
がん死亡者の数は二〇〇一年で三十万六百五十八人(全死者の三TOパーセント)、二〇〇二年には前年より三千六百二十八人増の三十万四千二百八十六人。
年齢別に見ても、五十代から六十代、七十代、八十代まで死因トップである。
そんななか、がんに関しては「仕方がない」という日本社会のマイナス思考がまだ根強くある。
(がんだから)お医者さんの言うとおりにするしか仕方がない、(がんだから)治らなくても仕方がない、(がんだから)死ぬのは仕方がない……はたして、それはどこまで本当なのか。
実際の話、治らないがんより治るがんのほうが多いし、がんにかかった人のすべてが命を奪われるわけでもない。
がんにまつわる「仕方がない」という社会のつぶやきは、一昔前の誤解や妄想が微妙に働くゆえだろう。
意味のない誤解や妄想には惑わされず、がんを上手に治すためには、どうすればよいか。
その答えは、自分の病気を正しく理解することだ。
がんは一人ひとりが別の病気と言われるくらい、種類や進行度によって治癒串や治療法が違うもの。
病気を怖れるよりも、自分のがんの本体を知り、前向きな姿勢で病気と向き合うほうが元気になれると思う。
それが人間の心の強さである。
難しい医学の話だから、患者家族は大抵、「何もわからない」と戸惑う。
それは当然だし、わからないことはわからないと伝え、医師の説明を冷静に聞く。
心ある医師であれば、時間の許す限りは、患者のもとめに応じて必要な医療情報をわかりやすく教えてくれる。
なぜなら、患者家族が医師の話を正しく理解しない限り、「納得」も「合意」もありえないからだ。
逆に、そこで嫌な顔をするような医師はどうせ頼りにならない。
さっさと見切りをつけたほうが身のためである。
インフォームドーコンセント、セカンドーオピニオン
がん医療の受け方の問題ぱ、患者個々の事情が異なり、およそ一般論などで語られる性質のものではないとも思う。
特に病名告知の仕方、治療法の選択、がん診療体制などで真っ先に問われるのは、
○だれのために、いつ、どこで、だれが、どのように教えるか(がん告知の仕方とその後のフォロー体制のあり方)。
○がんを教えた後の医療側は、だれが、どのような責任をもつか(治療法の提示とその後のがん診療システムのあり方)。
○患者本人と家族は、何を、どこまで理解すればよいか(患者家族による治療法の選択と状況判断)。
ということである。
これは同時に、患者側の新しい生き方とも関連してくる。
すなわち、患者の自己決定権やインフォームドーコンセント、セカンドーオピニオンなどの問題だ。
自己決定権とは、次のような考え方である。
「患者は、医師および医療従事者の誠意ある説明、助言、協力、指導などを得たうえで、自由な意思にもとづき、診療、検査、投薬、手術その他の医療行為を受け、選択し、或はそれを拒否することができる」(医療問題弁護団作成「患者の諸権利を定める法律」要綱案)
「成人に達し、健全な精神をもつ人間はすべてみずからの身体になされることを決定する権利を有する。
したがって患者の同意を得ないで手術を行う外科医は暴行を犯すことになる」
インフォームドーコンセントについては、以下の説明がわかりやすい。
「リスクを伴ったり、別の方法があったり、または成功串の低いような治療や処置について患者に同意を求めるにあたっては、あらかじめ、しかるべき情報を提供し、当然ながら、提供される情報は患者に理解できる言葉で説明されるのでなければならない」
「インフォームドーコンセントで患者が選択するのは、治療方針ではない。
患者が選ぶのは、自分のQOL(生命・生活の質)である。
予後についての患者の期待を医師に伝え、医師の提案する治療方針に同意するというのが、患者の役割である。
患者ぱ患者でしか決められないことを決める。
患者でなければ決められないことまで医者が決めるのをやめようというのがインフォームドーコンセントの基本線である」
セカンドーオピニオンについては第2章でも解説した。
患者の権利を尊重する立場から、必要な選択肢とされるが、日本の現状では、この言葉を聞いただけで気分を害し、露骨にイヤな顔をする医者がいる。
しかし人間一人の命がかかるがん医療でぱ「医療を選ぶも命のうち」。
特にセカンドーオピニオンが大きな意味を持つこともある。
ただ、日本人の精神構造というか、最初にかかった医者に遠慮して必要以上に義理立てする患者家族のほうが圧倒的に多数派だ。
これがかえって患者と医者の関係を悪くしているところがあって、セカンドーオピニオンを求めることが即、別の病院への転院といったケースが目立つようである。
そこで、セカンドーオピニオンの取り方の実例を次に紹介してみよう。
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